タネのたね

30代メカエンジニア。ファッションと育児・家事の隙間ブログ。

SUS304が磁化していたのでバーナーで炙った話

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設計と言えばパソコンに向かって作図や資料作成のイメージが強いかもしれない。でも実際に出来たものを組立てたり、特性確認をすることも当然ある。この時は少しイレギュラーで顧客への納品サンプルを作らなければならなかった。しかも納品期日に対し、部品が揃うのは前日。過去に似た物を組立てた時も相当苦労したので、今回も覚悟していた。
予定通りギリギリに部品が揃い、早速組立て後、特性を測るがなんだか様子がおかしい。使用するバネがどうやら加工によって磁化しているらしく、このままではよろしくないことが発覚した。
どういうことかというと、SUS304はオーステナイト系のステンレスであり一般的には非磁性であるのだが、曲げ加工等を行う際の応力が原因となり内部結晶構造が変化し、加工誘起マルテンサイト化して磁性を帯びることがあるのだ。要は真っすぐの棒の時点では非磁性だけど、曲げてバネ状にしたら磁化した訳。
結局部品はこれしかないので、夜中に残っていた数名でどうするか絞り出した答えは「バーナーで炙るか!」高温にすれば脱磁されるだろうという考え。
って事で実作業は下っ端の僕がやることに。バーナーを使う為に屋外に出るも、この日は大雨。作業場の裏の屋根があるところに丁度よさげな台があったので、そこに部品を置いて炙ることに。真っ暗な空間でバネを炙り続けること数分。次第に赤い輪っか状に光り出してきた。ただ、いつまで炙ればいいかわからないので、しばらく続けていると台にしていたコンクリがパキッといい音を出したので一人でちょっとビビった。
そろそろいいかなと加熱を止めた。ここでこの後どうするか決めていないことに気付いた。自然に冷ますの?水で急冷?携帯も持っていなかったし、誰も答えを知っているとは思えなかった。数秒悩んだ末、水も無いし(手を伸ばせば雨水があるが)自然冷却とした。
冷めた所で現場に戻り、色濃くなったバネを先輩に渡し磁石を近づけると「おお、くっつかないじゃん!」。コンクリの攻撃にビビりながらも炙ったかいがあったというもの。狙い通り脱磁ができたようだし、さっさと帰りたいので再度組立て測定を行なう。
ワクテカに測定結果を見ると、バネがへたってるw
目に見える荷重の低下により、我々のHPも完全に0になった。残念ながらこの時は100%満足行くものでは無いが磁化したSUS304で対応するしかなかった。。。
後日バーナーで炙った現場を通った際にコンクリを見てみると、案の定黒焦げのコンクリにヒビとバネの跡がくっきり残っていたが、体制に影響ないのでそのままにしておいた。コンクリを見るたびに、あの時の苦労を思い出しながら、今も頑張って働いています。

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